【輸出ビジネス成功への道】第1回:ビジネスプランの立て方

「輸出ビジネスを成功させる為の道」として連載企画でお届けしていて、第1回目となる今回は「ビジネスプランの立て方」になります。

輸出ビジネスもビジネスプラン他の事業同様にしっかりとしたビジネスプランを作成することが重要です。ビジネスプランは事業の全体像を把握し、リスクを管理しつつ成長戦略を描くための設計図となるため事前に作っておくことをオススメします。

それでは、輸出ビジネスのビジネスプランを立てるための要素を例とともに詳しく解説します。

なぜビジネスプランが必要なのか

ビジネスプランと聞いて気が重くなる方もいらっしゃると思います。そもそもビジネスプランを立てる理由は、多岐にわたるリスクや複雑さに対処し、ビジネスを成功に導くために重要です。
ビジネスプランは、事業の方向性を明確にし、具体的な目標を設定することで、無駄なコストや労力を省き、効率的な運営を実現する基盤となります。

以下は、ビジネスプランが必要な理由を具体的に説明します。

輸出ビジネスは国内ビジネスと異なり、取引先の国が異なるため、文化、規制、消費者の好み、競合環境など多くの要素が影響を与えます。ビジネスプランはこれらの要因を事前に分析することで、ターゲット市場を適切に選定するための道具として機能します。
市場調査を基に、どの地域にどの製品を輸出すべきか、またその市場における需要や競合を把握し、適切な戦略を策定することができるのです。

輸出ビジネスは物流やサプライチェーンの複雑さが伴います。商品の輸送方法やコスト、輸送中のリスク管理、在庫管理など、多くの要素が絡み合い、どのように効率化するかが重要です。

ビジネスプランはこれらを整理し、適切なロジスティクス戦略を立てるために必要です。例えば、海運や空輸、陸送の中からどの方法が最もコスト効果が高いか、また輸送中に発生し得るリスクにどう対処するかなど、具体的な計画を立てることが求められます。

さらに、各国の法規制や税制に対応するためにも、ビジネスプランは不可欠です。関税、輸出入の規制、必要な書類や手続きなど、各国ごとのルールに従わなければならないため、事前にこれらの調査や対応策を盛り込んだプランが必要です。
これを怠ると、予期しない法的トラブルやコストが発生し、ビジネス全体に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この他にもリスク管理投資家や金融機関に対しての信頼性を示すための資金調達の資料としても重要です。明確な計画を持つことで、資金調達がスムーズに進む可能性が高くなり、また外部からのサポートを得る際にも説得力のある資料となります。これらのことからビジネスプランを作成することは、輸出ビジネスに限らず事業においてとても重要だということがいえます。

ビジネスプランの構成を立てる

ビジネスプランの立て方は企業や事業によってさまざまですが、輸出ビジネスプランとして一般的な構成要素は下記になります。

▶ビジネスプランの構成要素
1. ビジネス概要(会社概要)
2. ターゲット市場の選定
3. 競合分析
4. 商品やサービスの選定
5. マーケティング戦略
6. 物流と供給チェーンの計画
7. 財務計画
8. リスク管理
9. 実施計画とスケジュール

上記をもとに例を交えながら書き方について説明させていただきます。

ビジネスプランを仕事で作成したこともありご存じの方も多いかと思いますが、ここでは初めてビジネスプランを立てる方に向けて説明します。ビジネスプランを立て方を知っている方や会社の雛形を利用できるため必要ないという方は【2024年度版・輸出ビジネスの始め方】成功するための基本まとめのページから必要な項目をご覧になってみてください。

  1. ビジネス概要(会社概要)

輸出ビジネスのプランは、まず会社の概要から始めます。以下の情報を盛り込みます。

•   会社名:○○輸出株式会社
•   所在地:東京都○○区
•   事業内容:主に日本国内で生産された伝統工芸品を海外市場に輸出
•   ビジョンとミッション:日本の伝統工芸を世界中に広め、日本文化への理解を深める
•   経営目標:初年度の売上1000万円、3年後には年間売上3000万円を達成
  1. ターゲット市場の選定

次に、輸出する国や地域を決定します。市場の選定は、商品の需要や競争状況を踏まえて行います。

例:アメリカ市場への進出

•   市場調査結果:アメリカでは、日本の伝統工芸品、特に陶器や漆器が高級品として認識されており、富裕層向けの需要がある。また、日本文化やアートへの関心が高まっている都市部(ニューヨーク、ロサンゼルス)に顧客基盤が存在する。
• ターゲット市場:アメリカ東海岸の都市部(ニューヨーク、ボストン)、西海岸のロサンゼルス、サンフランシスコを中心とした富裕層と高級レストランやホテル
• ターゲット顧客層:日本文化に興味を持つ富裕層、高級ホテルやレストラン、インテリアデザイナーなど
  1. 競合分析

競合分析は、現地市場での競争相手を把握し、どのようにして差別化を図るかを考える上で重要です。

競合企業例
• 現地の競合企業:○○ Importers(日本の陶器を輸入しているアメリカの輸入業者)
• 競合の強み:価格が安く、広いネットワークを持つ
• 競合の弱み:商品は大量生産されており、特別感や高級感がな

差別化戦略
• 高品質と独自性を強調:手作りの日本伝統工芸品として、独自性や文化的価値を強調する。
• ストーリーテリングを活用:商品の背景にある日本文化や職人技を紹介し、付加価値を伝えることで、競合との差別化を図る。

  1. 商品やサービスの選定

どの商品を輸出するか、またはどのサービスを提供するかを決定します。商品の選定には、輸出先市場での需要や競争力を考慮します。

例:商品ラインアップ
• 主力商品:手作りの有田焼陶器
• サブ商品:漆器、和紙ランプ
• 特長:職人の手作業による一点物で、日本文化を体現する高級工芸品
• 価格帯:1個あたり300ドル〜1000ドル
• 付加価値:商品ごとに職人のサインや制作過程を紹介する冊子を同封し、プレミアム感を高める

  1. マーケティング戦略

輸出ビジネスにおいて、どのように商品を現地市場でプロモーションするかを明確にします。

例:アメリカ向けマーケティングプラン
• オンラインマーケティング:
• 自社ECサイトを立ち上げ、SEO対策を徹底(キーワード:「Japanese pottery」「Japanese traditional crafts」など)
• SNSを活用し、インスタグラムやFacebookで日本文化をテーマにしたコンテンツを発信
• 現地のインフルエンサーと協力し、商品のレビューや紹介をしてもらう
• 展示会やイベント参加:
• ニューヨークやロサンゼルスで開催されるアートフェアやインテリア展示会に出展し、富裕層向けに直接商品をアピール
• 日本の伝統工芸に関するワークショップを開催し、文化体験と商品の購入を促進
• 現地パートナーシップ:
• 高級ホテルやレストランとのタイアップで、店内装飾や食器としての採用を促進

  1. 物流と供給チェーンの計画

物流は輸出ビジネスの重要な要素です。コストや輸送時間、信頼性を考慮して、適切な供給チェーンを構築します。

例:物流計画
• 物流手段:主に航空輸送を利用。商品が高価であるため、海上輸送よりも迅速かつ安全な航空便を選択
• 物流業者:DHLやFedExなどの国際的な物流会社をパートナーにし、商品の追跡と保険を確保
• 包装と品質管理:陶器など割れやすい商品には特別な梱包を行い、現地に安全に届けられるよう品質管理を徹底

  1. 財務計画

ビジネスを始めるために必要な資金、初年度の売上目標、コスト見積もりなどを含む財務計画です。

例:初年度の財務計画
• 初期投資:300万円(商品仕入れ、物流費、マーケティング費用、展示会出展費など)
• 運転資金:500万円
• 初年度売上目標:1000万円(500個の商品販売を想定)
• 利益率:商品の利益率は30%(輸送コストや手数料を引いた後)
• 資金調達方法:銀行融資、もしくはクラウドファンディング

  1. リスク管理

輸出ビジネスには為替リスク、物流の遅延、規制変更などさまざまなリスクが伴います。これらを事前に想定し、対策を講じておくことが重要です。

リスクと対策例
• 為替リスク:円高リスクに備えて為替予約を行い、為替レートの変動による損失を抑える
• 物流の遅延:複数の物流業者と契約し、代替ルートを確保
• 現地規制の変更:現地の法律や規制に詳しいパートナー企業を選び、最新の情報を常に把握する

  1. 実施計画とスケジュール

最後に、具体的なスケジュールを立て、各ステップをどのタイミングで実施するかを計画します。

例:実施スケジュール

1ヶ月目  :市場調査の完了とパートナー企業の選定
2〜3ヶ月目 :商品準備と輸出手続き、マーケティングの開始
4ヶ月目  :アメリカ市場での販売開始、オンラインマーケティング強化
6ヶ月目  :初年度のフィードバックを元に、次のマーケティング戦略や販売チャネルの見直し
9ヶ月目  :展示会への出展や新規パートナーシップの確立
12ヶ月目  :年間目標の達成状況を評価し、次年度に向けた改善点や新たな市場開拓プランを策定

まとめ

輸出ビジネスのビジネスプランは、成功のための具体的な道筋を示す重要なツールです。適切な市場選定、競合分析、マーケティング戦略、財務計画、リスク管理など、各要素をしっかりと計画することで、ビジネスの安定した成長が期待できます。

ビジネスプランを立てる際には、定期的に計画を見直し、現地市場の動向や競合の変化に柔軟に対応することが大切です。初期の計画が成功の基盤を作る一方で、成長に伴って新しいチャレンジやリスクも発生するため、常に現実に即したプランニングと調整が求められます。

輸出ビジネスに挑戦する際は、リサーチを徹底し、現地文化やニーズを理解しながら、戦略的なアプローチを取ることで、グローバルな成功を収めることができるでしょう。

東京商工会議所では、はじめての方向けの海外ビジネスハンドブックも紹介しています。PDFをこちらにも掲載しておきますので、是非ご覧になってみてください。

第2回目は「輸出手続きの完全ガイド」になります。手続きの全体の流れから重要な書類について記載していますので、ぜひともご覧ください。

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